音楽を聴くときは、常に先入観というか、ノスタルジー的なものが一緒についてくる。誰でもそういうもんなんじゃないかと思う。うまれてはじめて行ったライブで聴いた曲、MDでダビング(死語)して中学生のときに死ぬほど聴いた曲、昔好きだった女の子がよく聴いてると言ってた曲などなどなど。  

ひょんなことからチャットモンチーの10周年武道館ライブのライブDVDを手に入れる機会があり、さきほどまでそれを観ていた。 



チャットモンチーは、同世代の日本語ロック好きのほとんどがそうであるように僕にとってもかなり特別なバンドで、高校生の時から本当に何回も何回も繰り返し聴き、ライブに足を運んだ。
当時からお付き合いしていた今の奥さんが好きだったせいもある。「生命力」あたりから「Awa Come」、「You more」が僕らにとってのチャット黄金時代で、「You more」ツアーは今まで行ったライブの中でも3本の指に入るほど素晴らしいものだった。


が、ごめんなさい、「変身」あたりまではまだそれなりに聴いていたものの、それ以後は彼女たちの音楽を聴くことは減ってしまっていた。

過去の記事でも書いたように、「変身」は本当に素晴らしいアルバムだったと思う。ドラム高橋久美子さんはチャットにとってあまりにも大きすぎる存在で、彼女がいないチャットモンチーは絶対にもうそれまでとは異なるバンドで、それは我々ファンよりもまず彼女たち自身がわかっていたのだろう。全く違うバンドとしてやっていこう、そういう意味合いを込めたアルバムタイトル「変身」だ。彼女たちは大変身を遂げた。あれは本当にすごいことだ。

でも、全く違うバンドになったことは疑いようがない。どちらがいい悪いはおいておいて、違うバンドは違うバンドだ。ちょうど僕たち夫婦が社会人として新しい生活をスタートしてしまったこともあるのだろう。本当に彼女たちは「大学生のときよく聴いていた思い出のバンド」になってしまった。
 

そして今日、2016年5月15日(今調べてみると「変身」リリースから4年近くが経過していた)。10周年ライブのDVDを観た。

「親知らず」「ハナノユメ」「染まるよ」などなど懐かしの曲たちを、新編成で演奏する彼女たちの姿を観ていると、本当にジーン とした。2人編成後の曲たちもよかった。「満月に吠えろ」なんて、めちゃくちゃ前向きでいい曲だ。

僕は社会にでて4年が経ち、結婚して東京に住み、そしてまた一方で彼女たちも高橋久美子さんが抜けた後ここまでの観客を武道館に集め、年齢と出産のせいだろうか、どうしても避けられない声の変化をもろともせず、最高にかっこいいステージを披露していた。たった4,5年だけれど自分も彼女たちもいろいろ変わったなあと思った。最高におこがましいけれど、古い友人と久しぶりに会い、互いの成長を確認し合っているような気持になった。 

そんなライブの最後に披露されていたのがこの曲だった。 


この曲、どこかで聴いたことがあった。そう、たしか「変身」ツアーの最後だかで弾き語りで少しだけ演奏されてた曲だ。

「満月に吠えろ」 並みに、悲哀を感じさせながらも前向きな、生きる力をくれる曲だった。

もらったり 奪われたり きりがないよ
憧れたり きりがないよ

ぼくらは車を買って 作戦をたてた
「まっすぐに突き抜けよう
その先になにがあっても 目を閉じないでいよう」

いろんなことがあっていろんな挑戦をして、たぶん我々ファンは知る由もないであろう困難があって、それでも目を閉じずにまっすぐに突き抜け続けた彼女たちが歌うこの曲。この歌詞。僕たちが大好きだった、そしてこれからもずっと大好きだったんだろう彼女たちがこの曲を歌っている。


ずっと彼女たちを追いかけてきた人たちには怒られるかもしれないが、でもこういう聴き方だってあるはずだ。音楽を聴くときは誰だってなにがしかの思い出のようなものと一緒にそれを咀嚼するはずだ。

そういう意味で、最高の曲だった。 

共鳴(初回生産限定盤)(DVD付)
チャットモンチー
KRE
2015-05-13