すみません、今回はちょっと固めの本をご紹介します。



といっても、新書でページ数もそんなにないのでわりとすっと読めました。AI関連の入門書としては大変わかりやすく、僕みたいなド文系の人でも楽しんで読める1冊です。

購入のきっかけは、今年の元旦らへんにNHKのEテレでやってた「ニッポンのジレンマ」。AIについて考えよう、みたいな項があって、そこでドワンゴの社長さん(たぶん)が「将来はこの世のほとんどの仕事を機械が奪うようになる」「いまの世の中で『芸術作品を作る』などのいわゆる『クリエイティブ』だと評される作業ですらも、機械が過去のデータや法則性をもとにして行うことができる世の中になる」といったことを話されていて、それをもとに社会学者の古市さんあたりを中心にいろいろと議論されてらっしゃいました。

そのとき僕、2015年あたまくらいからよく話題になっていたAI関連のニュースやら本を全く読んでなくて、でもこの話題を結構面白く感じて。で、近所の書店にいってとりあえず面陳されてたこれを手にとって買った、というわけなんです。


■内容


目次はこんなかんじ。

第1章 最新AIの驚異的実力と人類滅亡の危惧
 ――機械学習の光と陰

第2章 脳科学とコンピュータの融合から何が生まれるのか
 ――AIの技術と歴史

第3章 日本の全産業がグーグルに支配される日
 ――2045年「日本衰退」の危機

第4章 人間の存在価値が問われる時代
 ――将棋電王戦と「インダストリー4.0」
1年ほど前に話題になった、「機械に奪われるであろう仕事ランキング」をさわりとして、最新AIがどんな能力をもっていて、どんなことに使われつつあるのかを第1章に、第2章でAI研究の歩んできた歴史と、その仕組みについて(個人的にはここが一番面白かった)、3章ではそれを踏まえて日本あるいは世界の産業にどのようなインパクトを与えるのか、4章では副題にある「人工知能は人類の敵か」「どう活用していくべきか」といった話をしていきます。


■みどころ


ぜひ読んでほしいのが第2章。本書いわく、そもそもAIという考え方というか、技術の研究そのものは、20世紀の中頃から開始されていて、だからこそスティーブンスピルバーグの「AI」や「ターミネーター」「マトリックス」といった、「人口知能が暴走して人類を支配する」という発想のもと作られた映画が多く存在するわけです。実際に「チェスの世界チャンピオンがコンピュータのチェスに敗れた」というニュースが20世紀の終わりころに流れたのも記憶に新しいところではないでしょうか。

それがなぜ今になって再び取りざたされているのか。一言でいうと、ここ数年で、そのAIの技術が飛躍的に進歩を遂げたからです。
なんでも、かつてのAIは、あることがらに関する過去の実績あるいはデータを大量に分析し、そこから答えをはじき出す、といういかにも機械的な計算に基づいて動作していたそうなんです。本書で使われていた言葉を使うと「ルール・ベースのAI」というやつです。ところがこの考え方は、「現実で実際に起こる不測の事態について考え始めるときりがなく、効果的な結論が出せない」という問題を同時にはらみます。

そこで登場したのが、「ベイズ理論」をもとにしたAIです。ベイズ理論とは、「最初は適当に決めた不正確な確率から出発し、これを何らかの実験や測定、観測などによって、もっと正確な確率へと改良していこう」という考え方のこと。例えば自動運転車は、このベイズ理論に基づいた計算を1秒間に何百万回も繰り返すことによって、車をどう動作させるのか結論を出している、というそうなんです。
さらに最近は、そこに人間の脳の仕組みをAIに反映させることによって、より人間のinput→output→学習→成長というサイクルによってAIそのものが成長する、というものまで開発されているそうで、より人間に近いアンドロイドのようなAIが生まれる可能性もあるそうなんです。


…はい、ぜんぜん何言ってるのかわからなかったかと思いますので、詳しくは本書を買って読んでください。僕のつたない&適当な説明だと全然伝わらないかと思いますが、このへんがほんとにわかりやすく、丁寧に書かれておりました。

他にも人類にとってAIは脅威か、とか電子将棋のこれからとかも書かれてたんですが、そこにはあんまり興味がわかなかったです。ドワンゴの社長さんがおっしゃってた「クリエイティブが~」という話についても、結局2章に書いてあることを読むとだいたいこういうことか、と理解できました。

あ、あとあれでした。「機械がクリエイティブなものを創作できるか」という話題の例として、音楽をつくるAIが取り上げられてました。なんでも、過去の名作の音符の羅列、規則性、不規則性を分析して新しい曲をつくることができるAIで、素人の被験者はそれがAIの作曲したものだと気づかなかったそうです。

そのAIが作った曲でAKBが歌う、とかしたら売れるんじゃないかなあ。

■まとめ 

というわけで、専門知識と 時事性がいい具合に織り交ざり、それをわかりやすく消化している、ということで大変よい「AI入門」な1冊なんじゃないかと思いました。 自動運転車とかペッパーとかSiriとかどうなっとるんやろう、となってる人は読んでおいて損はないんじゃないでしょうか。