「ひまわりっ」「ママはテンパリスト」にはじまり、「主に泣いてます」「海月姫」「かくかくしかじか」「東京タラレバ娘」と立て続けにヒットを飛ばし続ける東村アキコ氏(メロポンが面白かったとは言ってない)。

タラレバ娘のヒットの影に隠れ、あんまり騒がれてはおりませんが、最近2巻が発売になってた「雪花の虎」がめちゃ面白いです。 読み方は「ゆきばなのとら」。雑誌「ヒバナ」に連載中です。



 

■設定、あらすじ

越後の戦国武将、上杉謙信を主人公にしたばりばりの歴史漫画です。が、ひとつ特徴的なのが、「上杉謙信は実は女だった」というある種都市伝説的に昔からある「謙信女性説」に基づいている点です。

表紙の女性が上杉謙信こと、虎千代。通称虎ちゃん。

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この虎ちゃん、将来の越後の武将なることを期待されて男の子として育てられ、その結果大変男勝りな女の子に育っていき、1巻では姉や兄、育ての親となる僧侶宗謙にわがまま放題やりたい放題で暴れまわります。

が、2巻の真ん中あたりで、「虎を男として育てる」と宣言した父が亡くなってしまいます。これを機に虎は武将として生きる決意を固める意味で元服を行い(普通は男性しかしないもの)、名を虎千代から景虎と改めます。で、越後から少し東にいった三条というところのお城に入城することになり、いよいよ謙信は歴史の表舞台に立つことになります。


■みどころ


2点あると思います。一つ目が東村アキコ氏の歴史の描き方が独特で楽しいこと。東村アキコ氏、作中でもさんざんか書かれていますが、もともと歴史が大の苦手なんだそうで、そういう人が楽しめるように、でも歴史漫画として、上杉謙信という武将の偉大さを最大限引き立てるような形式をとるように大変工夫して描いてらっしゃるな、と感じます。

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↑これ、超斬新じゃないですか。上杉謙信女性説についてめちゃくちゃ真面目に解説してる下の段で東村先生がすげえルーズに上の段について説明してる、っていうページです。
こんなページが1巻に1箇所はでてくるのですが、こういうおふざけページもごくまれに登場させつつも、ストーリーそのものはなにげに超王道の歴史漫画。おおもとの設定が「謙信女性説」に基づいているのでこれまでの作品のようなイロモノ漫画かな、という先入観で読んでしまいそうですが、全然そんなことはなく、戦国時代の群雄割拠感、戦における戦略論などは他の歴史漫画となんら遜色ありません。

で、二つ目のみどころは、なんといっても主人公虎ちゃんの成長っぷりです。あらすじにて述べた、2巻の虎ちゃん元服の回。ここからの虎ちゃんの覚醒がハンパじゃないんです。1巻から2巻前半にかけてのわがままおてんば娘っぷりが、最高の伏線となり、元服以降の虎ちゃんのかっこよさをひきたてています。例えて言うならドラゴンボールの孫悟空がでっかくなって帰ってきたときの、あの感覚。そんな少年漫画のようなアツさも兼ね備えた作品に仕上がっております。



■感想 

そう、この作品、「バクマン」風に言うと「設定だけ邪道の超王道」な歴史漫画なんです。 一番最初に挙げた東村アキコ氏の作品を思い返してみると、じつは王道の少年青年漫画って、1作もなくて。これまで「主泣き」に代表されるような、すがすがしいまでに邪道の邪道を貫いてきた漫画家さんです(海月姫はまだそうでもないかもですが)。

でもこの「雪花の虎」は、なんなら「キングダム」 の原先生が描いたんですか?ってくらいアツい作品に仕上がってます。でも設定が「謙信女性説」なんで東村色に合ってる、という。

ってわけで、これ、他の東村作品の例にもれず(メロポンはアレでしたが)大変売れそうな作品なので今から押さえといてみてはいかがでしょうか。 
(あとぜひとも「ヒモザイル」は連載再開してほしいです)