こんな本を買いました。




かなり面白かったので軽くご紹介してみようと思います(がっつりとした書評的なものではないので、悪しからず)。 

■読むきっかけ

今度著者の木下斉さんが東京にてセミナーを行うそうなんですが(すみません、イベントのリンク探したんですがちゃんとしたのが見つかりませんでした)、そのセミナーを知人がFacebookにて紹介していたんです。

知人曰く、「理論でなく実践を通してまちづくりに関わってきた木下氏のお話を聞けるのは本当に貴重である」、「机上の空論、きれいごとに飽き飽きしている方はぜひ」とのこと。

もともと「地方創生」、「まちづくり」といったワードに興味があったので、そんなに言うならいっちょこの人の本を読んでみよう、と思いこの本を手に取ったのであります。

何点か著書を出されているそうですが、氏のブログを読んだかんじ、これがいちばんよさそうだ、と思い手に取りました。

■著者について

まずは本書に書かれていた経歴を引用しておきます。 

木下斉(キノシタヒトシ)1982年東京都生まれ。まちビジネス投資家/事業家。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事(2009~)、一般社団法人公民連携事業機構理事(2013~)。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、経営学修士。高校在学中から早稲田商店会の活動に参加し、2000年株式会社商店街ネットワーク設立、社長に就任。その後経営学の理論を合理的な地域再生ビジネスの方法論に落とし込み、2008年より熊本城東マネジメント株式会社を立ち上げる


僕は全く木下氏のことを知らなかったのですが、どうやらまちづくり界隈ではかなり有名な方なんだそうです。

早稲田大学の付属高校に通っていらっしゃった高校時代からまちづくりに関わる団体に所属して上記のような成果を残し、まちづくりの第一人者となった方だそうで。なんでも彼が所属していたのは、あの『五体不満足』の著者、乙武洋匡さんが学生時代に参加されていた団体なんだとか。『五体不満足』を読んだことのある方は、「ああ、あのエピソードにでてくるあの団体か」とピンとくるはずです。

10代の頃から大人の集団に飛び込み、社会活動を続けてきた木下氏ですが、輝い経歴とは裏腹に、かなりたくさんの失敗も経験したそうで。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、本書の帯に「傷だらけでつかんだ現場の知恵がここに!」とある通り、最初に関わったプロジェクトの後は失敗続き、一度街づくり界隈から身を引いて経営を学んだ後に再び現場に戻って地方再生の活動を続けてらっしゃるんだそうです。

故に書かれている内容も、経験に基づいた実践的なものばかりで、そこが他の街づくり本と一線を画しているところなのかな、と思いました。
 

■内容

じゃあどんな内容の本なのかってことなんですが。まずは、上記の著者のブログから目次を引用させていただこうと思います。 

はじめに

序 章 学生社長、ハゲる

挫折した初めての事業/早稲田商店会の「楽しくて儲かる環境運動」/ 行政を巻き込む/ネットを駆使して商店会の裏方を担う/ 補助金という〝麻薬〞がまちを壊していく/「株式会社商店街ネットワーク」を設立/ 脱力と脱毛の日々/痛い教訓/社会の常識はまちづくりの非常識

第一章 まちから「利益」を生み出そう!
アメリカで学んだ「自立型」まちづくり.........

資産価値を自分で高める/小学校の校庭も保護者が手作り/ 大学院で理論と実践がつながった/経営視点のまちづくりに開眼/

ふたたび〝実践〞の世界へ.........

まずは「コスト削減」から/テナントと不動産は分けて考える/ 相手に三回得させろ/いざ熊本、ゴミ問題に着目/ 束ねてコストを下げ、品質を上げる/「三分の一ルール」を徹底/「挨拶」する本当の理由/競争の何がいけないのか/ 重要なのはカリスマよりもシステムだ

「まち会社」の顧客は誰か

事業目的とターゲットを明確にせよ/不動産オーナーがまちの価値を高める/ 当事者意識が全てのカギ

第二章 まちづくりを成功させる「10の鉄則」
まちづくり事業の「開発投資チーム」/お金より覚悟が大事/地域のために自腹を切れますか /沈むまちの「言い訳テンプレート」/

鉄則1 小さく始めよ.........

たった一軒の店がまちを変える/ターゲットは絞り込む/ ユニークな店を多数集積

鉄則2 補助金を当てにするな.........

補助金依存の悪循環/「ゆるキャラ=地域活性化」の大きな勘違い/ 悲劇を避けるために

鉄則3 「一蓮托生」のパートナーを見つけよう.........

まずは二、三人の仲間で十分/「血判状レベル」で結束出来るか

鉄則4 「全員の合意」は必要ない.........

「合意」したから動くわけではない/決断するのは事業者自身/ 賛同者を「馬車」に乗せてはいけない

鉄則5 「先回り営業」で確実に回収.........

まちの未来に必要なテナントを探し出せ/再投資のサイクルを生み出そう

鉄則6 「利益率」にとことんこだわれ.........

経費を削減して利益を伸ばす/まち全体の利益率を高める/ 設備投資型も、規模より利益率/高粗利業態を集積する

鉄則7 「稼ぎ」を流出させるな.........

なぜ全国チェーン店ではダメなのか/資金は域内で調達/ 生協・信組のルーツを見直そう

鉄則8 「撤退ライン」は最初に決めておけ.........

事業は三ヶ月ごとに点検/撤退のルールを設定しておく/ 禁断の「一発逆転の大勝負」

鉄則9 最初から専従者を雇うな.........

ほとんどの仕事は「兼業スタッフ」で回せる/「働き方」を見直そう

鉄則10 「お金」のルールは厳格に.........

初期には避けたい「不特定多数」からの資金調達/分配ルールも明確に


第三章 自立した「民」がまちを変える
金食いインフラを「稼ぐインフラ」に

行政からお金をもらうのではなく「払う」/公有地に民間の資本と知恵を投入/ 行政の初期投資なしで公共施設を建設/市場性と公共性を兼ねる施設を/ 民間開発で規模を適正化/強みを活かした「ピンホール マーケティング」/ 規模が変わっても基本は一緒

行政と民間は緊張感ある連携を

小さな取り組みが制度を変えていく/公有地を活用した各地の取り組み/ 自立した民間を行政が支える

民間主導でまちを変えていく

市民「参加」から市民「実行」へ/「ゾンビ会社」のオルタナティヴをつくろう/ 「指定管理」から「民間経営」へ/民間の営業力が産業と雇用を生み出す/実践者自ら知恵を伝えよう


おわりに

【付録】まちを変える の覚悟 
 
第一章の前半部は先に述べた著者の半生、経歴を端的にまとめたものとなっており、これはこれで読み物としてなかな楽しめるものになっていました。

しかしぜひ読んでいただきたいのは、第一章の「ふたたび実践の世界へ」の項から第二章にかけて。著者のこれまでの失敗・成功経験を基に、まちづくりに関わる上での考え方を、「まちづくりを成功させる10の鉄則」等を通して記してらっしゃいます。

僕は特段まちづくりに関わるお仕事をしているわけではないので、これらがどこまで現場で通用するものなのか、といったことを判断することはできませんが、まちづくりに関わらず、現在の業務において同じ考え方をもって取り組めるんじゃないかと思ったところが随分とありました。

詳しくは本書を読んでいただきたいので割愛しますが、特に印象に残っている点をひとつだけ記しておきます。

・「不動産オーナーがまちの価値を高める」という考え方

著者がアメリカを訪れた際、まちづくりについて日本と決定的に異なる部分があることを見つけて驚いた、という話を一章の真ん中部分でしています。それは、「まちづくりは官主導ではなく民間、とくにその地域の不動産オーナーが主導して行とう」という常識が根付いていることだ、と。 

現地で不動産オーナーと話をすると、誰もが積極的に地域に投資をしている。それはなぜかと言えば、「自分の資産価値を高めるため」だと即答。「まちづくりは自分たちのアセット・マネジメント(資産運用)だ。だからこそ行政ではなく、まずは不動産オーナーである自分たちが連携して投資をするんだ」とのこと。 


そして筆者は続けて、「これまで街づくりを『誰が得をするのか』といった視点で考えたことがなかった」と衝撃を受けた、と記しています。

これは大変面白い話ではないでしょうか。この「長い目で見れば自分の利益になる、故にこの活動・提案を支持する」という考え方。これが本当に国の風土として根付いているのだとすれば、なんて良い国なんだ、アメリカ、と思ってしまいます。

しかし例え理屈では正しいんだとしても、この論理をもって投資をあおぐ、というのは本当に大変なことなんだそうで。著者はこの考え方を日本でのまちづくりに活かそうと、地域の不動産オーナーにまちづくりへの投資を試みますが、当然それだけでは相手にしてもらえません。そこで彼らの重い腰を上げさせる、彼らにもリスクを負ってもらうために何をどうしたのか、何をすべきなのか… といったところが本書の第2章の10の掟にて詳しく書かれているわけです。

■まとめ

 ということで、この『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』、街づくり本としてだけではなく、ビジネス書、経営指南書、マネジメント論などなど、いろんな意味合いでたいへん勉強になった本でありました。

上に書いたことはほんの一部なので、ぜひぜひ本書を手にとってお読みいただければよろしいかと思われます。