先日のSWEET LOVE SHOWER、それから大阪のRUSH BALL、OTODAMAが終わって、7月末くらいから続いてた夏フェスシーズンが、だいたいひと段落した感があります。で、そんな今ちょっと思ったことがあったので書こうと思います。

よく言われてることですが、近年の、とくにここ1,2年くらいの野外フェスブームはほんとに凄まじいです。僕が初めて「フェス」と呼ばれるものに参加した6~7年前くらいの頃は、そもそも「数多くのアーティストが集まって野外や大型イベント施設でライブを行う祭」を指す「フェス」という言葉そのものが今ほど浸透していませんでした。フェスに参加する人は、ある程度音楽を聴き込んでいて、ほどほどにマニアックなアーティストを贔屓にしている人が行くところ、といった印象でした(それは僕が当時高校生だったこともあるとは思いますが)。

でも今は違います。クラスタのばらばらな20代の男女10人を集めたらだいたい半数以上はいわゆる「夏フェス」への参戦経歴がある、あるいはこれから行く、といった状況を肌感覚として感じます。これは現在20代である方ならだいたいが納得するんではないでしょうか。「CD不況に伴う音楽不況」みたいな話が公然と議論されている中でのこの状況はほんとにすごいことだと思います。


で、今回の記事で僕が主張したいのは、「そうやってフェスに行くことで音楽を聴く、あるいはライブを観ることに関する楽しさを再確認した人は、そこからもっと深堀りしていこうよ!」ということです。


ちょっと以下の僕の作り話を読んでみてください。




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夏フェス未経験の女子大生(19)A子。彼女は大学のサークルの友人からの誘いで、野外フェス、メトロック2014に参戦することになりました。
彼女が普段聴く音楽は、嵐や関ジャニ、それにEXILEを少々。正直言ってこのメトロックに出演しているOKAMOTO’Sや9mm、ホワイトアッシュなんて見たことも聞いたこともありません。そんな彼女が参戦を快諾したのは、同じサークルの気になる男子A(23)とお近づきになりたいがため。曲はほとんど知らないけど唯一知ってるきゃりーぱみゅぱみゅを観られればいいかな、あとこういう場でもないとドカジュアルな服装を気になる男子A(23)に見せつけることもできないからね、くらいの気持ちでこのフェスに参戦します。

フェス当日。そんな彼女は、気になる男子B(23)のすすめで、星野源のステージを観ます。そして驚きます。耳馴染みの良いキャッチーなメロディと、これまで聴いたどのアーティストより心が洗われる声。そしてなにより、ジャニーズにもEXILEにも決していないタイプの、彼のその甘いマスク。彼女はすっかりそのステージに夢中になりました。

女子大生「ジャニーズもEXILEもいいけど、フェスっていいじゃん!」
男子B「お、じゃあ8月のROCK IN JAPAN一緒にいく?」

そんなうれしい会話もできた彼女は、それ以来、約3か月後に開催されるROCK IN JAPANに向けて猛勉強を開始。OKAMOTO'Sや9mm、ホワイトアッシュ等、メトロックで観たアーティストはもちろん、サカナクションやマキシマム ザ ホルモンのMVやライブ映像を、YouTubeでサビのとこだけを抽出して視聴する形式で動画を梯子し、彼女は「ライブを観たら、ある程度は曲がわかり、かつノれる」アーティストの幅を広げていきます。
そうして彼女は3か月後のRIJFにBと参戦。今回も完全夏フェスファッションでキメてきた彼女はキャッキャウフフの大変楽しい時間を過ごすことができたのでした。

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良いことなんです。良いことなんですよ。ロッキングオンやMUSICAなんて雑誌がこの世にあることなんて知りもしない10代の女性が、9mmやオカモトズの音楽を聴く、なんてことが頻繁に起こりうる世界。これは絶対に良いことなんです。

でもこれは結局、「CDは買わないしアーティストの深堀りもしない、でもフェスは好きだから行く」系女子がこの世に産み落とされた、ということと同義なんです。僕はそれが、本当にもったいないなあと思うわけなんです。


YouTubeで「星野源」と検索すれば、彼のMVがたくさんでてきます。そして例えば「CRAZY CRAZY」のMVをじーっと観ていると、シングル「CRAZY CRAZY」の特典映像へと切り替わり、曲からは想像もつかない彼のおちゃらけた一面を垣間見ることができます。これを観ると、関連動画に「オトナの!」なる星野源の対談動画が上がってきて、それを観ると彼が実はアーティスト以外の活動を展開するマルチな人なんだってこともわかるし、それがわかれば、彼が主演する映画、「箱入り息子の恋」や「地獄でなぜ悪い」を観ることにもなるだろうし、ここまで好きになったらこないだ出たライブDVD・Blu-rayを観てみたいってことになるだろうし、もしそれを買ったら一緒についてたブックレットの「星野源 武道館までの軌跡」っていうあの超感動的なコラムを読むことになるだろうし……

といった具合で、ちょっとの深堀りが、時にとんでもない宝物に出会うきっかけとなる、そんな可能性を秘めていて、YouTubeでもなんでもある今の時代、それは本当に容易になっているんだと思うんです。




フェスという場に、いろんな理由で人が集まって、しばしば「ロキノン系」と呼ばれるほどほどにアンダーグラウンドなアーティストとその人々が出会う。そんな素晴らしい瞬間が本当に増えました。でも残念ながら、今はまだそのフェーズで止まってしまっているんです。

だから、フェスで知らないアーティストに出会うことがあったら、ぜひ、ちょっとだけ「深堀り」してほしい。YouTubeでサビだか聴いて終わり、でなくて、そこからせめてTSUTAYAで有名っぽいアルバム借りて通しで聴いて、なんならアルバム買って歌詞カード頭からおわりまでぱらぱらめくってその世界観を感じたうえでもっかいアルバムを通して聴いて、くらいのことをすればもっと世界が開けるはずなんです。

で、アーティスト、あるいはレーベルの人たちも、リスナーのそういう流れを考えてスキームを創ってほしい。例に挙げた星野さんはほんとにその辺の気遣いが素晴らしくて、「ああ、投げ銭しなくちゃな」という気持ちにさせてくれる仕掛けが多々ある。でも、そういうことをあんまり考えてないんだろうなってアーティストもたくさんいて、そこはがんばってほしいなと思う。


音楽業界が下向きだ、とかCDが売れねえとか言われてもう何年も経ってる気がするけど、フェスの活況っていうのは、間違いなくそれを打開するキーの一つなんだと思います。だから、リスナーの僕らも、作る側の人たちも、あともう一歩、踏み込むことを考えた方がいいんじゃないかと、そんな風に思う今日この頃なんです。
 
 
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