一言で言うと、その時感動して泣いたっていう、ただそれだけの話なんですが。

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10-FEET

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そもそも京都大作戦とは、10-FEETが彼らの地元、京都で毎年主催者として開催してる野外フェスのことで、今でこそアーティスト単体でライブイベントをやるってけっこう当たり前に行われてるけれど、1アーティストがこの規模の野外フェスをやるってその当時は全然例がなくて、しかもこのフェスの1年目は台風で開催中止になっちゃって、それでもその次の年に全く同じアーティストが参加に応じて同じラインナップで無事開催を成功させて、それ以来毎年開催されて異常な盛り上がりを見せていて、というなかなかの逸話を持つ、関西では伝説的に有名なお化けフェスでして。関西にいる人はほんとおすすめです。

2011年7月11日、当時大学4回生であった僕は、このフェスに足を運んだわけですよ。

このフェスでは毎回10-FEETがトリ務めるのが慣例なんですが、この日、2011年7月11日の演者には、POLYSICSだのドラゴンアッシュだのホルモンだのと、ものすごいメンツが揃ってて、しかも彼らがありえないレベルのライブを続けざまにかましたんです。あの時のホルモンのmaximum the hormoneは今思い出しても鳥肌立ちます。

で、そんなものすごいパフォーマンスを炎天下の中、一日中見せつけられた末、トリの10-FEETが登場したんです。


いやあ…これはほんとにその場にいなければわからないアレなんですが、日も暮れかけてて、ホルモンのライブ後のありえない熱気がまだ残ってて、そこにいる全員が10-FEETになにかものすごいものを期待しているような、めちゃくちゃ異様な雰囲気が漂ってたんです。


で、そんな中で鳴り響くテンフィのSE。きっとその場にいた全員が鳥肌びんびんだったでしょう。僕はもはやぶるぶると震えてました。なんかこれから、とんでもないものを観てしまうような、そんな気がして。

1曲目「super stomper」、2曲目「VIBES BY VIBES」、3曲目「1sec.」、4曲目「RIVER」。
いずれもものすごい盛り上がり。人が渦を巻いて、跳び、叫ぶ。観衆全員が、その一挙一動に魂を込めていた。


しかしTAKUMAはその3曲が終わったのち、「クソーー!」と叫ぶ。これだけすごいライブをやってもなお、この日、それまでにパフォーマンスを見せた他のバンドに自分は及ばない、と。

そして歌ったのがこの「風」。



実際の映像。「太陽の昇る丘」とはこのフェスが行われている、宇治市の太陽が丘のこと。「あの日からもう4か月」の「あの日」とは3.11、東日本大震災の起きた日のことだろう(この日はちょうどその4か月後だった)。

「風」の歌詞、これまできちんと聴いたことなかったんですが、こんなこと言ってるんです。

いつまで歩けば辿りつくの

笑って振り返る日はくるの

積み上げたアルバムを開いて

ありがとうなんて今まだ僕は言えないよ

何年も先からやってきた香る風

どうか見てきておくれ

サムデイいつか振り返って笑えますか僕は

ああ 教えてくれよ


どんなつらい記憶も、嫌な過去も、いつか、それを振り返って笑えるものにできればそれでいい。それまで僕たちは走り続けるしかない。消しゴムのあとだらけの白の方がイカすんだ。

震災が終わって半年ないくらいのこのとき、日本は、もちろん関西もまだまだあの変な空気の中に居ました。
震災に関係がある人もそうでない人も、みんななにかしら嫌な過去あるいは現在と戦って生きています。そんな僕たちがこんなタイミングで、こんな雰囲気の中でこんな歌を聴いた。

あれは本当に奇跡のような瞬間であったと思います。きっと毎年、3.11が来るたびにこのライブを思い出すんだろうなあ。



あれから2年とちょっと。あの時悩んでたこととか戦ってたことを振り返ると、ふふっと笑い飛ばせるようなものもあれば、まだまだ苦い思い出のものもあり。
でもそんな消しゴムのあとを大事にせねばなあ、とあれ以来思うようになっています。



…とか書いてる途中に気づいたんですが、結構前にアップした10-FEETの紹介記事に全く同じような話書いてましたね。

10-FEET ―「凡人」に贈る。優しくて実直な唯一無二のメロコアバンド―

なんかすみません。まあそんくらい感動したってことで。