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光のなかに立っていてね *通常仕様光のなかに立っていてね *通常仕様
銀杏BOYZ

初恋妄℃学園
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銀杏BOYZ。ゼロ年代邦楽ロックを代表する「伝説のバンド」、GOING STEADYのボーカル、峯田和伸氏が、同バンド解散直後に結成。
ボーカル峯田氏のライブ中の下半身露出、骨折、松葉杖をついての演奏など、ともすれば色モノ扱いされてしまう彼らだが、人の持つ醜さ、幼さ、汚さと真っ向から向き合い、圧倒的な熱と激しさを持って音を出す彼らに圧倒的な支持者がいることもまた事実。

そんな彼らが昨年、9年ぶりに新アルバムをリリースすることを発表した。
「ボーカル峯田を除く全メンバー、安孫子真哉(b)と、チン中村(g)、そして村井守(dr)の脱退」というなんとも衝撃的なニュースとともに。



  • 銀杏の思い出
…と、いかにも「俺峯田のこと知ってます」風に語っておりますが、平成2年生まれの僕が峯田さんの音楽を聴くようになったのって、銀杏が前のアルバムをリリースした9年前くらいなんですよね。つまりリアルタイムでゴイステを追ってたわけじゃない。
友達先輩とカラオケで「BABY BABY」歌ってたり、文化祭で先輩たちが「銀河鉄道の夜」やってるの観て聴いて知って、そんで「さくらの唄」TSUTAYAで借りて、それではまって前作の2枚借りて、っていう流れで聴いた。

で、そんときは正直、名盤と謳われる「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」、「DOOR」の二枚にそこまで入れ込めなかったんですよ。
もちろん「もしも君が泣くならば」とか、「漂流教室」とかとか「東京」とか「駆け抜けて性春」とかの名曲を聴いて、あのキャッチーでポップで熱くて泣きたくなるほどまっすぐに若者心、もとい童貞心を歌ってる彼らを本能的に「ヤバい」と感じたのは確か。
でも、同時に「援助交際」とか「あの娘は綾波レイが好き」とか「犬人間」とかみたいにちょっぴりエグめの曲をアルバムの頭に持ってくるのもまた銀杏。この両極端を1枚に収めるのがまた銀杏のすごさでもあるんだけど、それら全部をひっくるめて肯定できるほどぼくは大人ではなかった。故に銀杏を「好き」「超聴いてる」って言うのはなんか恥ずかしかった。
あくまで、「良い曲あるけど所詮色モノでしょ」な態度で彼らを語っちゃってました。

  • 銀杏熱、再燃
そんな僕が、ツイッターで偶然こんな記事を拾い、読んだんです。

銀杏BOYZのボーカル峯田和伸、1万字インタビュー:朝日新聞デジタル

 ――周囲から「まだ出ないのか」と言われ続けて。

 周りには、「あと1曲で終わる」って3年ぐらい前から言ってた気がしますね。もうちょっと早くできればよかったんだけど。やっぱり1人が倒れちゃった時に、その人を置いて3人だけでは進めないから。たった1分のフレーズが弾けなくて、3カ月も経ったりするんですよ。

 ――レコーディングが長引いた理由の一つに「終わってほしくない」という心情もあったのでしょうか。

 終わらなかったら、4人だけの夢の国だからね。誰にも発表してない状態で、4人しか知らない。4人がつくった4人のためだけの音楽。でも途中から、いつかは終わってしまうんだな、という寂しさはあった。早く出さなきゃいけないっていう気持ちと同時に。不思議な感じでした。

 みんな印税も少なくなって、どんどん生活が厳しくなっていくのに。でも4人で一緒にいる時は、4人で一緒に音出したり、映画見たり、すごく幸せで。今は3人いないから、もう……。4人でゲラゲラ笑って、身も心も一心同体になったあの空間は、何物にも代え難いですね。
(中略)
  青春が終わったっていう気がしますね。普通の人では味わえないぐらい長く、青春を過ごせた。これからは音楽が始まるな、という気がしますね。やっと。


「このアルバムで青春が終わった」「これからは音楽が始まる」
かっこいい。こういういつまでも頭を離れないすごい言葉をひょいっと吐けるところがこの峯田さんっていう人のすごいところのひとつなんでしょう。

「伝説」と謳われるバンドが、メンバーが脱退に追い込まれるほどの、ものすごい試行錯誤を、9年間繰り返してきた。その末にできた1枚。それが今作、「光のなかに立っていてね」である。

そんなことを書いてるこの記事を読んでから、どうにも銀杏のこのアルバムのことが気になって頭から離れなくなり、結局発売日当日にタワレコに走って買ってしまった、と。そんなわけでこいつは今僕の手元にあるわけなんです。
  • 「これからの日本」を歌う銀杏
画像1
(「ぽあだむ」の歌詞が書いてるページ)

で、聴いてみての感想。超簡単に言うと、9年前にリリースした2枚でバンバン放ってた童貞色は影をひそめ、でも一方で「俺たちは大人になった、でもあの頃の気持ちも忘れちゃいないぜ」と古参の方々の寂しさも掬い取る、そんな「真ん中を取った」10曲が並んでる1枚なんじゃないかと思います。

アマゾンのレビューを読むと、その辺の評価がけっこうばらけていて楽しめます。

まあ~、9年前の2枚を銀杏の神髄だとして聴いてる方々にとっては、なかなかショッキングと言えばショッキングなんでしょう。いわゆる「打ち込み系」っていうんでしょうか、ギターを演奏してないやつ。そういう曲が大半を占めるもんですから。

それでもあの心の深いところにまっすぐ突き刺さってくるかんじのメロディーと歌詞のセンスはやっぱりずば抜けてて、という凄みを増していて。

例えば、峯田氏自身がこのアルバムの核だと語っている「ぽあだむ」。


(曲がはじまるのは4:00くらいから)

イントロのキラキラしたなんかよくわからん「ティティティティティン♪」って音からはじまり、「夕立が過ぎて 街の匂いはしょっぱくなった」と歌いだす。

「電車もパルコもキラキラしてんだ」
「『ねえなんか日常って、武器のない戦場ね』」
「『ノイズってきもちーね、カオスって綺麗だね』」


このポップなメロディに、悲しげでかつ切ない、でもなぜかキラキラした希望に溢れた歌詞をぴたっと乗せる峯田さん。天才か。


上の朝日新聞のインタビューで、峯田さんはこの曲についてこんなことを話してます。

 ――「ぽあだむ」には、「80円マックのコーヒー」といった言葉と並んで「6時から計画停電」という言葉が出てきます。

(中略) 

 「ぽあだむ」には、震災の後の東京の雰囲気が出てる。一時期、計画停電で町田とか真っ暗になって。ちょうど震災直後に、事務所の社長が亡くなって、町田で葬式があったんです。あの時、行きの車も渋滞で、信号も止まってという変な状況で。

 葬式が終わった後、お店も照明落として。ありましたよね、変な時期。俺が生まれて初めて目にした、変な東京。人はすごく歩いてて。お店は電気を消したり、早々とシャッター下ろしたり。商店街も変な雰囲気で。本当に不謹慎なんですけど、あの東京の雰囲気がワクワクしたんですよね。言ったら悪いんですけど。

 歩いている人もみんな、心なしかウキウキしてて。「こんな東京すごいよね」みたいな顔で。未来の東京を見たような気がしたんですよね。本当に一時期で、今はもうそんな空気なくなりましたけど。みんな暖房つけっ放しだし、電気もガンガンついてるし。俺、もうちょっと、あのぐらい暗くなってもいいと思うんだ。まだ終わってないし。あの東京が、忘れられないですね。

 高校の頃、音楽でもファッションでも渋谷系っていうのが流行(はや)って。90年代のあのきらめきが、2度とやってこないっていうのはわかってる。でもね、俺はあの夜の東京、変に暗い夜の東京の商店街を歩いていて、渋谷系とは異質なんだけど、きらめきを感じたんですよね。すごく未来があると思った。不謹慎だけどね。

 ――確かに、非日常に酔っているような感覚はありましたね。

 ハロウィーンで盛り上がって、コスプレして渋谷で集まろうみたいな、そういうノリではなくて。もっと、磁場っていうか、地面と人間がくっついてできた変な高揚感っていうか。2070年とか2085年とか、未来の日本を一瞬見られたような気がしたの。

そう、この「ぽあだむ」、言われてみればなんだかすごく「未来」を感じる曲だったんですよ。
この切な悲しくしっかりポップなかんじが、なんか。

「俺、もうちょっと、あのぐらい暗くなってもいいと思うんだ。まだ終わってないし。あの東京が、忘れられないですね。」と。これ、すごくわかるんです。
身の程知って、もっと幸せとかちゃんと考えて、そんな急がなくても明るい未来が待ってるよって。

この曲を聴くと、そんなことを言われてる気がしてくるんです。


というわけで、銀杏にはこれからも、この「ぽあだむ」のような、今まで聴いたことないような新しい曲、未来を感じられる曲をもっと作って欲しいなと思いました。そういう「新しさ」を「未来感」を感じられるという意味で、この「打ち込み系」なかんじは、僕にとっては大変良い意味での方向転換でした。 なんだかんだ、おすすめです。

数年後、このアルバムを聴いて、「ああ銀杏のこのアルバムって、銀杏のみならずこの後の時代の音楽の一つのキーになったんじゃないかな」とか、そんなことを思いそうな1枚です。